独居心不全患者に○○が加わると再入院の危険因子となる
はじめに
独居
心不全患者さん、特に男性の場合は様々な面から心不全管理において不利であることは広く知られていると思います。
何より、臨床で痛感します。
同じ男性としてよくわかるのですが、一人で生活していたら規則正しい生活なんてほぼ不可能だと思います。笑
食事は作るのがめんどくさいから簡単なものや買ってきたもの、外食になる。
寝る時間も自分が好きな時に寝て好きな時間に起きる。
運動だって1人だったらやろうって気にならないんじゃないかと思う。
先行研究でも
“同居人の有無は高齢者の疾病管理能力に影響すると考えられている”
高林健介他:心不全患者における独居と機能障害の併存が予後に与える影響.心臓リハビリテーション, 26(2) : 222-228, 2020.
とされており、やはり臨床の肌感は間違っていないようです。
1. 研究デザイン
多施設前向きコホート研究
今回の研究は北河内心不全レジストリ(KICKOFF Registry)に登録されている要介護認定を受けていない心不全患者さんです。
この研究の特徴は身体機能障害と認知機能障害を評価しているところです。
身体機能評価には高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準のランクA 以上を身体機能障害の基準としています。
認知機能評価には認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランクII 以上を認知機能障害の基準としています。
いずれもけっこう厳しいところで線を引いているので、少しでも疑わしい場合は機能障害ありと判断されると予想されます。
2. 結果から考えられること
まず、独居と非独居で比較してみた結果がこちら。
有意差はありませんでした。
ちなみに、今回の研究での1年での心不全再入院率はおおよそ30%程度であり、過去の先行研究とおおむね一致した数値となっています。
つまり、独居であるというだけでは危険因子とは言えないようです。
おかしい…臨床的印象とずれている…
そこで、独居に先ほど書いた機能障害のいずれかを有している群と有していない群で比較してみた結果がこちらです。
見て明らかなように有意差が出ています。
つまり、独居だけではなく独居に身体機能もしくは認知機能の(あるいは両方)機能障害があると再入院の危険があるということが示唆されました。
論文の中では以下のようにコメントされています。
“独居は食事や栄養面での管理が困難になることのみではなく,運動機会の減少から骨格筋機能異常をきたす可能性があり,さらには社会的孤立やうつ傾向へ影響する可能性がある”
今まで確かに独居ということで漠然と要注意かな?と感じていましたが、独居というより身体機能障害、認知機能障害の有無に目を向けることが必要であると考えられます。
今回の研究で用いた基準はとても曖昧ですので、今後の研究が期待されますが、曖昧とはいえリハビリテーション総合実施計画書や介護保険の意見書などでよく利用される指標を利用していることには一定の価値があると考えます。
また、今回介護保険サービス利用の有無も検討されていますが、心不全再入院において有意差が無かったそうです。
過去の研究では心不全の再発防止のために介護サービスを活用した方が良いというものもありましたが、それだけではうまくいかない可能性も示唆されています。
3. まとめ
独居という、やや先入観に近い感覚だったリスクファクターの価値について理解することができました。
これからは機能障害にしっかり目を向けてフィルターをしっかりはっておくことが必要と感じました。
地域性など様々な要素が関わってくるところだと思いますが、独居+機能障害がある患者さんの場合は再入院アラートを発動させて再入院抑制に尽力すべきであると考えます。
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