心肺運動負荷試験(CPX)できない時のADL自立判定

 

Porcs(ポルクス)代表の眞鍋です。

本日は心肺運動負荷試験(CPX)できない時のADL自立判定についてお話したいと思います。

心臓リハビリテーションというのは、心肺運動負荷試験(以下CPX)が基本です。

CPXの結果をもとに適切な運動負荷を決めて運動処方を行います。

CPXというのは、簡単に言えば

『だんだん重たくなる自転車を限界までこぐ』

という試験。

基本的にはその時の呼気ガスを測定してそのガスの変化で色々診ます。

限界までこぐ(症候限界性)というのは、やはり体に負担になるのでなかなか高齢者や重複障害があるとできないんです。

そんな時には他のデータから推定するしかないですよね?

そういう研究はけっこう色々とあって、今回は一つご紹介してみたいと思います。

1. 研究デザイン

今回の研究はこちら

渡辺敏他:高齢心血管疾患患者における日常生活活動の自立を判別する身体運動機能について.

心臓リハビリテーション, 22(2/3) : 163-168, 2016.

対象は65歳以上の心大血管リハビリテーションを実施した患者さん553名。

単施設での検討です。

内訳は前期高齢者が59%とやや若い人が多いです。

疾患的にも虚血性や心臓の術後の方が多く、心不全は後期高齢者~超高齢者に多くなっているようです。

身体機能として以下を測定しています。

  • 握力
  • 等尺性膝伸展筋力(ミュータス)
  • 10m歩行速度(最大)
  • 片足立位時間
  • 前方リーチ距離(FRT)

統計的には以下を実施。

  • CPX結果の最高酸素摂取量と各種身体機能の相関
  • CPXの結果である無酸素性作業閾値(AT)が4METs以上ある群をADL自立として身体機能をROC曲線で解析

なお、85歳以上の超高齢者はCPXを実施しておらず、上記検討の対象となったのは75歳未満の患者さんになったようです。

2. 結果と考察

結果ですが、まず最高酸素摂取量と身体機能の相関関係がこちらです。

決して強い相関ではないですが、歩行速度と下肢筋力が特に相関がありそうですね。

歩行速度に関しては天井効果があるとのことです。

つまり、歩行速度が微妙な人の指標にはなりますが、バリバリ歩ける人の場合、最高酸素摂取量を正確に反映しているかは検討が必要と言えます。

次に、ROC曲線を描いてみて、感度・特異度を算出したのがこちらです。

ここでもやはり歩行速度が感度・特異度ともに高い結果が出ています。

”歩行速度1.77m/sec
等尺性膝伸展筋力体重比0.51kgf/kg”

これらが1つ、ADL自立の目安の値となってきそうです。

10m歩行で言うと5.6秒くらいですから、臨床の肌感的にもきわどいラインな感じです。

3. まとめ

今回の研究では超高齢者が対象から外れています。

プラスにとらえれば、比較的若年の心臓リハビリテーション患者さんであれば上記の数値が1つの判断材料になります。

あまり年齢の幅がありすぎる対象だと薄まってしまうので。

一方、やはり超高齢者こそCPXができないので、他の指標でADLの自立を推察できると嬉しいところです。

ADLの自立の可否については筋力や耐久性だけが問題ではありませんので、もちろんこれらの数値だけですべてを判断するのはナンセンスです。

1つの自分の中での目安として覚えておくと活用できるのではないかと思います。

ちなみに、

超高齢者群の歩行速度は1.01±0.38、下肢筋力は0.36±0.1という結果

ですので、ほぼ全例で目標のカットオフ値までいけていないようです。

超高齢者群にどれだけADL自立の方がいたのかわかりませんが、ADL自立している方もいるはずです。

おそらく骨関節系、神経系、視力、バランス機能など筋力や体力以外の要素の影響が強くなってくると予想できますね。

つまり、超高齢者群についてはよくわかっていないことが多い、ということです。

今後研究がどんどん進んでくると思います、私もこれらのテーマについて研究してみたいと思っています。

本日のお話は以上です、最後までお読み頂きありがとうございました!

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